チェルサイエとマルモマック(2)
マルモマック――石材の地域性と進化
本記事は、前編「チェルサイエ(1)に続く後編として、イタリアにおけるもう一つの重要な素材見本市「マルモマック」を取り上げます。
チェルサイエがセラミックを通じてインテリアと建築の現在地を示す場だとすれば、マルモマックは、石材という素材が、建築の中でどの様な思想と役割を担ってきたかをより根源的に見せてくれる場です。

今回の視察では、比重としてはチェルサイエが 8 割でしたが、マルモマックに触れないわけにはいきません。
ただし、マルモマックは「最新の石材トレンドを見る場」という文脈ではありません。
むしろここで見えてくるのは、石材の地域性と加工技術、建築家との関係性、そしてイタリア建築において石材がどのポジションを担ってきたのか、という非常に独特な世界です。
- どの地で採掘されたか
- どう切るか
- どう加工するか
- 建築の中で、石をどのレイヤーで使うか
といった、
「この素材をどう読み解き、どう使うか」という思想が前面に出てきます。
そこには、建材としての石材というより、建築を成立させるための構造材・表現材としての石材の姿があります。
建築家とのコラボレーションが自然に成立し、石材メーカーが「素材提供者」ではなく建築プロセスの一部として振る舞っている。
この関係性こそが、イタリアにおける石材文化の強さであり、チェルサイエのセラミックとはまた別のレイヤーで、確かな“厚み”を感じさせる部分でした。
【石種・加工技術を写真で紹介】
陰影をデザインしたカット
リガートフィニッシュ
重量から解放する石材の薄板化
チェッポ・ディ・グレ
アマゾニーテ
オニックス/天然のデザイン
オンブラ・ディ・カラバッチオ
ライムストーン/金継ぎをイメージ
ポルフィド
25 年やっていると、見なくなるものがある
私がこの 2 つの展示会の視察に初めて行ってから 25 年経ちました。 長くこの仕事に関わっていると、展示会の見方そのものが少し変わってきます。
各メーカーの展示物に対して、「なぜこのデザインなのか」「どういう意図があるのか」と、一つひとつに立ち止まり理由を探しすぎてしまうと、かえって大事なものを見落としてしまうことがあります。
その代わり、引っかかりのあるデザインに遭遇した際には、時間をかけてメーカー担当者から詳細なお話を伺います。自分の経験を交え、お互いの引き出しの引っ張り合い、イタリアのマ ーケット事情など副産物的なお話を聞けることもあり、楽しい時間でもあります。
大事なデザイン文脈は、毎年そう簡単に現れるものではない。だからこそ、“見る”よりも“流す”展示が増えてくるのも事実で、駄作に振り回されないことも重要になります。
空間の構成、素材の選び方、説明しすぎない姿勢など、一瞬で引っかかるものは、ほんの一部に限られていました。
セラミックと石材を、他素材とどう見るか
セラミックや石材は、単独で語ると“強い素材”に見えます。
ただ、実際の空間では、LVT タイル、メラミン、木材、壁紙、鋼鈑など、さまざまな素材と並び、時に食い合い、時に補完し合います。
重要なのは、「何が流行っているか」ではなく、それぞれの素材が、どの立ち位置を担っているのか。
トレンドだけを追うと、どうしても話は浅くなる。今回の視察では、その“背景”の部分をあらためて考えさせられました。
今年もイタリア・サローネをはじめ、現地視察を予定しています。また、こうした視点での発信も、定期的に続けていくつもりです。
1 つの展示会の“結果”ではなく、その裏にある考え方や背景、展示会だけでは拾えない他素材の取材も積極的に行っていきたいと思います
【セラミック・石材以外のマテリアルリサーチ】
ウォータープルーフ壁紙
ウッドパネル新作


