2024 シーテック ジャパンモビリティショー
こんにちはTEAM建装です!
2024年10月15日から18日の4日間、幕張メッセで開催された「CEATEC2024」と「Japan Mobility Show」を視察してきました。
今年は隔年開催のJapan Mobility Showが「Japan Mobility Show Biz week」としてCEATECと共催されるという初めての試み。隔年開催のJapan Mobility ShowはB to Cの一大イベントとして世界各国から100万人を超える来場者を集めるが、今回の「・・・Biz week」はB to Bとして、AIを中心とするテクノロジーの業界が、日本の産業を担う自動車業界とコネクトすることを目的として共催が実現しました。
CEATEC2024の来場者は11万人超えで日本の展示会としてはかなりの集客。この業界の活況をかなり感じます。大学の研究室の出展も多数あり、高校生、高等専門学校の生徒の来場者も多く、将来の人材動向を垣間見ることができます。
今年のCEATECのテーマは「Innovation for All」。カーボンニュートラル、省人化などに向けAIやテクノロジーを駆使する開発を各社行っており、生活を一変させる技術革新が我々末端の消費者にも近くまで迫っていることを感じられました。
「Japan Mobility Show Biz week」について
TOYOTA、HONDA、NISSAN、MAZDA、三菱、SUBARU、SUZUKI、ISUZUなど主要メーカーが参加。各社通常のMobility Showのように新車、コンセプトカーを出展するのではなく、カーボンニュートラルを2050年に達成するという国の方針に向かって、新しいエネルギー開発の取り組みを紹介していました。
■TOYOTA
8㎏の水素カートリッジ
水素調理コンロ
バッテリーの再利用システム
TOYOTAは唯一車の出展をしていません。
次世代を担う水素エネルギーを車の動力以外にも使う試みを紹介。カートリッジ式の移動型水素タンクと水素を使った調理器具。水素の活用の幅の広さをアピールしていました。カートリッジは人が運べる重さとして8キロに設定。ただしこのタンクでコンロやバーベキューグリルは数時間しか稼働できないので、イメージ的にはキャンプで使うカセットコンロ。プロパンガスのように常設の住宅向けには向かない。まだ実販売はされていないが、日本規格、ヨーロッパ規格の物が用意されていて、近い将来一般販売もされるかも。
また、車から取り外したバッテリーの再利用システムの展示も。車用としては脆弱になってしまったバッテリーを複数台つなげ、風力発電、太陽光発電と連携させて充電と出力を繰り返すシステム。1つ1つのバッテリーは弱まっていても1つずつ出力をコントロールすることによってすべてのバッテリーを完全に寿命まで使い切り、廃棄に持っていきたいというコンセプト。
■HONDA
ホンダは水素燃料とプラグインのハイブリットカーを市場に投入するということで出展。
新型CR-Vプラグイン水素カー
水素タンクで荷台が犠牲に
水素燃料充填口
ホンダは2000年から水素カーを市場に投入しているが、TOYOTAの「MIRAI」ほど世間では認知されていない。水素ステーションのインフラや水素カーのメンテナンスの問題があり、対応できるPITを持っている販売店限定での展開だったとの事。水素の補充に関しても講習が必要だそうで未講習の方はセルフでは補充できないそうです。今回の車は水素燃料とプラグイン電気のハイブリッドになっていて、電気の充電だけで約60キロの走行距離が確保できるそうです。
水素燃料補充やインフラの問題もありますが、水素の弱点はさらに2つ。タンクをコンパクト且つ変形サイズにアレンジできない。先ほどのTOYOTAのブースで紹介されていたような円筒状の形状でしか使用できないそうで、この車にもタンクが2つ装備されていて、1つは荷台スペースにせり出しています。TOYOTAのMIRAIも車室はとても狭いです。
そしてもう一つの弱点が価格です。既に公道車として実装されているシステムですのでその価格を調べるとガソリンとほぼ変わらないイメージでした。しかし国からの補助金が出ているので今の価格に抑えられているとのことで、実際はガソリンのイメージに近い表現をすると400円~500円/㍑するそうです。
水素自体は安価に工場などから排出されるところからも採取できるそうですが、純度を高める工程に相当な費用がかかるとの事です。
水素カーに関しては国からのバックアップを盛大に受けている印象を持ちました。公道を走るエネルギー車にもかかわらず、ガソリン税に相当する税金も徴収されていません。これから水素カーが主流になったら税金とるのでしょうか。
■MAZDA
MAZDAはBio dieselのカーボンニュートラル燃料の開発を行っています。
このBio dieselは藻を原料とするdiesel燃料。広島県、大学の産学官連携で研究を進めているとの事。最大の強みは現行のdiesel車にそのままこの燃料を使用することができる。ただし使用時の問題点抽出には走行テストが必須だが、現段階ではサーキットでの走行テストのみ。Bio diesel燃料には本来のdieselガソリンと同じガソリン税が適用されておらず、Bio diesel用の税金設定がないので公道を走れず(DieselガソリンにBio dieselを20%混入するのは良いそうです)、公道テストは実施できていないとの事。この辺 りは水素燃料と国の扱いの違いを感じます。また藻から燃料を作るにも巨大な水槽(プラント)が必要との事で実装されるのはまだ先のようです。
■SUBARU
スバルはガソリン燃料をこれからも基本軸にしていく。そのガソリン燃料はヨーロッパの燃料メーカーが開発したカーボンニュートラル燃料(新CN燃料)を使用していくことを発表している。この燃料は大気中に放出されたCo2を吸着して再びガソリン燃料に戻す技術を使用している。理論上はカーボンニュートラルということになります。
この燃料も先ほどのMAZDAと同様、現行のガソリン車にそのまま使用できるのが強み。SUBARU、MAZDA、TOYOTAの3社が同じ燃料を使い、S耐久レースに参戦して実車検証しているそうです。エンジンの違いによる問題点の抽出など多くの会社が参加することで加速度的に開発が進んでいるのと、この燃料メーカーのCNガソリンはスペインではすでに実販売もされているとの事。ただし、さらなる普及をするにはまだ価格も高く(そもそもヨーロッパはガソリンが高価で、この新CN燃料も水素燃料並みの価格との事)、大型のプラントを建設して量産に対応する必要があるようです。
■三菱
三菱はプラグインハイブリッドのアウトランダーの新車を市場に投入。プラグインの充電での走行距離は100Kmを実現。日常では充電だけでの走行、遠出をするときはガソリンを給油するという考え方。新燃料を採用せず、EVに偏りもしないということで三菱ではプラグインハイブリッドを現状の最適解としている。
新型アウトランダー
荷台も十分なスペースを確保
プラグインの充電口
■日産
日産はEVに全振り。今は世界的にもEVが新エネルギー車の主戦場になっている。
ARIYA現行モデル
近未来的デザイン
自由度が高く車内が広い
何かと走行距離や充電時間、充電スポットの数が問題になるEV車だが、フル充電で500~600キロの走行距離を可能にし、実は充電スポットの数はガソリンスタンドの数と変わらないというのが日産の説明。EVの強みはバッテリーの形状を変形できることなので、薄い形状にして床下、天井など広い面に逃がすことができ、しかも駆動がガソリンエンジンと違いモーターだけなので車室を広くとることができる。ただしバッテリーは大きな車体を動かすにはパワー不足な点があり、搭載量を増やすしかないので一般ユーザー向けのミニバンサイズは今のところ実現していない。
EVに関しては現段階でカーボンフリーの対策としては一番身近なものになっており、様々なモビリティに採用されている。またデザインの自由度が高い事とEVのイメージも手伝って近未来的なデザインという印象を受ける。
ISUZUのEVバス。バスの車体を電気で動かすとなると相当量のバッテリーを搭載する必要があるが、バッテリーをフラットにして屋根に逃がしている。更にガソリンエンジンのように駆動部がないので車内がフルフラットの設計になっており高齢者や子供連れの乗客でも安心して利用できる。このようなデザインの自由度はEVならでは。この車体は2025年の大阪万博で実運用されるとの事。
こちらはLean Mobilityの3輪電気自動車。Lean Mobility はTOYOTAで設計・研究・開発をされていた谷中氏が独立して設立した会社。そもそもTOYOTAで開発していた2人乗りの3輪自動車だったが、TOYOTAがこの車種の撤退を決めたことで独立したとの事。独自のシャシー設計で車体の傾きを抑えることができる。屋根付きバイクとは違い、ピラーがありしっかりとした車の筐体になっているのでそのシャシーの構造で車体を倒して曲がるのではなくハンドル操作で曲がることができる。日常の1人移動に大きな車体は必要なく、エネルギーも最小限に抑えられるというコンセプト。2025年に台湾で初の販売がスタートするとの事。台湾では2人乗り(前後に乗車)として販売できるが、今後日本で販売する場合は、法律上1人乗りでしか販売ができないとの事。バイクの場合は2人乗りが可能だそうだが、あくまでも安全性にこだわり車体を車として設計しているので日本では1人乗りとして割り切っているとの事でした。
KAWASAKI初のピュア電動モーターサイクルや、HONDAの交換式バッテリーシステムの展示も。充電スポットで充電時間を待つことなく充電済みのバッテリーにすぐ交換できる。このようなシステムは中国や日本の商業車ではすでに採用されている。
EVをはじめとする新エネルギーの実装や、AIを駆使した交通情報などのデータの利用で交通網を管理するなどの実装実験は商業車が先駆けて販売・利用を進めている。 すでにISUZUはすべてのエネルギーに対応する車体を運用しており、コネクテットサービスや2027年の運用を目指し自動運転システムのロードマップを発表している。 今回CEATECに参加している様々な企業の技術が集約されている感じです。
テスラ、BYD(中国)の勢いに押される形で欧州の自動車メーカーや日本の自動車メーカーが苦戦を強いられているニュースがこの展示会の前後に飛び込んできているが、中長期を見据え、すべての自動車メーカーが全方位的にエネルギー問題に取り組んでいる様子がうかがえる。
各メーカーの担当者に聞くと、何をするにもCo2排出は避けられないわけで、現段階ではEV,ハイブリッド、その先は水素、新CN燃料(ガソリン)、Bio diesel燃料など様々な方式が乱立するのではないかとの見解でした。
CEATECというテクノロジーの展示会と共催する形でJapan Mobility Showが開催されたことは、とても深い意味を持ったものになったのではないでしょうか。